安全なプール管理

 

プール監視員の監視能力

今日はプール監視員の監視能力についてお話したいと思います。昨今、プール監視業務は、「人の生命、身体、財産を守る」業務であるという事で、プール監視業務を他人からの依頼を受けて商売として行う場合は、警備業による法規制のもとで行うことが明確になっております。

 

ひと昔前は、夏場のプール監視を地元のシルバー人材センターのおじいちゃんたちが暑い中で汗をふきながら頑張っている光景をみかけましたが、現在は警備業の認定を持つ団体がプール監視を行っております。

 

そこで、警備会社(ここでは警備業の認定を持って商売している企業等のことを指します)各社は、プール監視員、すなわち警備員に対して、警備業法に基づいた教育を行うことになっております。

従来の警備員に対する教育カリキュラムは、建物の出入管理等をする警備員、別の言い方をするとガードマンですね、この方たちを一人前の警備員にするための教育カリキュラムがベースとなっていますので、プール監視員の監視能力を向上させるための教育はとても重要で、警備会社各社の創意工夫により行われております。

 

当協会でも監視員の監視能力向上を図るための教育手法について講習会を開催しております。

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突然、クイズです。

では、ここで問題です。

「一人の監視員が何人の遊泳者であれば問題なく監視できるでしょうか?」

 

答えは、

 

「遊泳者の状態(人数や年齢など)、水泳場の形状(深さや大きさなど)、監視者の能力(経験値や人数など)により全く異なるため、何人ですと言えません」となります。

ずるい回答ですね。(スミマセン)

 

この答こそが、実はプール監視員が始めてとなるスタッフに、最初にきちんと伝えなくてはならないポイントになります。

 

お子様から目を離さないで! 

以前、このブログで「保護者の方はプールで遊泳するお子様から目を離してはいけません」という内容の記事を書かせて頂きました。

 

これは厳密にいうと手の届く範囲です。保護者が目を離した隙にプールへ連れてきたお子様が溺れてしまう事故が過去に起こっております。

 

この場合、保護者は勿論、プール監視員ではありませんが、自身が連れてきた1人や2人の幼児を監視することさえ、時に困難になる事があるとも言えます。

 

プール監視員は、屋内プールで監視するのか屋外プールで監視行うのか、混雑状況、遊泳している人は誰なのか、様々な要因により監視員に求められる要求は変化します。

 

施設管理者は混雑状況に合わせて監視員を柔軟に増員する責任があると、過去のプール事故による裁判事例で述べられております。

 

例えば、幼児園児が多数泳いでいるプールを監視するのと高等学校の水泳部の生徒が練習で遊泳している状況を監視するのでは、まるで監視の仕方が異なることを考えれば明白ではないでしょうか。

 

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PTAによるプール監視

毎年、夏休み期間に小学校ではプール開放が行われてきましたが、この時にプールサイドで監視活動をするのは、大概PTAの方たちです。

この方たちはプール監視のプロではありません。児童のお世話をするために当番で駆り出された保護者の方たちです。

 

最近はネット社会ですから、安全水泳について検索すれば、知識は得られますが、実地(具体的な監視方法)については現場で適切な指導を受けていないと、不安定な監視活動に繋がる恐れがあります。

 

ヒヤリ・ハットの活用

当協会の安全講習会ではプール監視について、車の運転に例えてお話します。車を運転するには、交通法規の理解と運転技術の両方が必要です。そして実際に道路で車を運転すると、事故にはならなかったものの、ヒヤッとしたりハッとした事を沢山経験しながら運転経験が積み重なってより安全な運転ができる優良ドライバーへと成長していく事になります。

 

安全リスクを低減するための有効な手法の一つに、労働安全や自動車運転でも用いられている「ヒヤリ・ハット」事例を活用した安全教育がプール監視においても有効です。

 

当協会では、各プール施設で実際にあった「ヒヤリ・ハット」の事例を活用した安全教育を行っております。ちなみに「ヒヤリ・ハット」とは、事故に至る可能性のあった出来事の「発見」です。

つまり事故に至る可能性があったものの、事故に至る前に発見されて防ぐことができた場合のことです。そして「ヒヤリ・ハット」に関する法則としては有名なものに、ハインリッヒの法則というものがあります。

 

ハインリッヒの法則 

ハインリッヒの法則とは、1つの重大事故の背景には、およそ29の軽微な事故があり、さらにその背景には300のヒヤリハットが存在することを法則化したものです。

このハインリッヒの法則は、アメリカの保険会社において技術・調査部の副部長をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、1928年の論文で発表した災害における統計に基づいています。

 

ハインリッヒは5000件以上におよぶ事故事例から、この法則を統計的に導き出して発表しました。ハインリッヒの法則では、重大事故の背後には多くのヒヤリハットが存在していることを数値化したわけです。

 

ですから私たちは、プールの各施設でヒヤッとしたこと、ハッとしたしたこと現場においてスタッフ間で共有してもらい、軽微な事故、重大事故に繋がる前の「事故リスクの芽」を小さいうちに摘み取ってしまうことで、事故リスクの低減化を図るよう、講習会で重点的にお話させて頂いております。

 

勿論、ヒヤリ・ハットの状態は好ましい事ではありません。

しかし、このアラートを早めに処理する事で安全リスクが低減していく好機と捉え、具体的な有効対策を練ることが大切です。

早めの準備をお忘れなく!